会長ご挨拶

 

 

 

 

 

 

 第5回日本周産期精神保健研究会

会長 高橋 雄一郎

岐阜県総合医療センター 産科·胎児診療科

 

第5回日本周産期精神保健研究会 開催にむけて

 

今世界では、終わりの見えない大きな戦争が続き、死亡者の数が連日報道されます。命の尊さが損なわれているように感じます。一方、我々周産期医療の戦場では小さな命をいかに救うか、日々奮闘しています。

先日、岐阜の保健所の連携会議でショッキングな報告がされました。周産期の少し先の教育現場ではこどもの数は10年間で数万人減少したにもかかわらず、要特別支援、自閉などのこどもの数がかなり増えているというものでした。それだけご家族にとって子育て環境が厳しくなっています。社会も問題は山積みです。貧困、精神疾患、子育てのむずかしい家庭環境の世代間連鎖の問題は、養育困難な多くの妊婦さんを生んでいます。

そんな中、我々は家族のできる周産期、出産の瞬間を大事にしています。それは救命のみならず、幸せな家族形成に少しでも役に立ちたいと願っているからです。ひとりでも虐待をうけるお子さんを減らすにはどうしたらよいのか、それが周産期から始まる医療におけるとても重要な目標の一つとなっています。また同時に、生命は完全なものではないことも知っています。生きていくのに必ずしも平均的でない個性を持って生まれてきたり、生きてこの世にたどり着けない児もまた多く存在します。そんな生命誕生の現場をいかに温かい心でささえていくのか、そういう気持ちを共有できる仲間を増やし、道標を学ぶとても大切な場がこの周産期精神保健研究会です。将来、日本をささえていくであろう生命を守り育むため、我々は日々このようなご家族の出産、そして家族形成の過程、その後をどのように支えていけば良いのか、学びたいと考えています。

本研究会は2013年の第1回(大阪)「親子の物語が始まるとき、私たちにできることは?」に始まり第2回(埼玉)「親子の物語が続くとき、私たちにできることは?-周産期から在宅医療までのかかわりー」,第3回(名古屋)「病院と地域で家族の心を支える―私たちにできることは?」、第4回(東京)「子(個)をはぐくむ多様な家族への支援」というテーマで開催されました。

今回岐阜では「家族みんなのその後の物語 ~周産期、それから、を学ぶ~」をテーマとしました。いわゆる長期予後ではないのですが、長い経過から当時を振り返ることで新たに学べることがあると考えます。そして家族全員への支援のありかたを学びたいとかんがえております。コロナ禍がすぎ、ぎふのこころの研究会も復活いたします。毎回行っているワールドカフェも再開できたらと思います。そして明日から実践できる学びを得られるように、参加される皆様方が主役の研究会を企画いたします。

皆様がたのご参加を心よりお待ち申し上げております。

                               20242月吉日